振り返って、接吻
とはいえまだ少年らしさが残る華奢な体躯と、壮絶な色気を孕む美貌のアンバランスさは、思春期の由鶴が持つ最大の魅力だ。
「でも、離れるほうがキツイってわかるから、殺したいくらいに苦しくても、俺はオマエから離れられない」
由鶴はそう言って、丁寧な力加減でわたしを抱き締めた。彼の体温はわたしより低くて、それがなんだか心地良い。縋るような抱擁に、わたしへの依存や執着を感じる。
———わたしをいちばんにして。
わたしのことだけを見つめて。わたしだけが特別なのだと、わたしこそが正義なのだと、泣いて縋って手を伸ばして。
客観的に見たら〝抱き締めた〟だけど、実感的には〝抱きついた〟ってかんじかも。でも、華奢だと思っていた由鶴の背中は想像よりもずっと広いと知った。
由鶴とわたしがいくら仲が良いからといえども、こういうのが日常的に行われているわけではない。由鶴をこんなに近くに感じたのは、いつぶりだろう。
由鶴は、いま、すごく弱っているんだ。
わたしの八つ当たりを許してくれても、わたしが彼の心につけた深い傷は癒えていない。言葉は凶器だ。それを知っているくせにわたしは、いや、きちんと知った上で由鶴を傷付けた。
そのナイフがどれほど凶悪かを理解して、わたしは思いっ切り彼をぶっ刺した確信犯。
「ゆづ、ほんとにごめん」
「俺、怒ってないよ」
「うん、でも、ごめん」
こんなにそばにいるのに、的確な言葉も見つけることができない。
目を閉じて。口を閉じて。それでもずっと側にいて。