振り返って、接吻


———この日からわたしは、由鶴に凶器となる言葉を投げつけることはしていない。



むしろ罪を償うかのように、ぬるい言葉ばかりを選んできたように思う。

由鶴自身も、何事もなかったのように〝わりと仲の良い幼馴染〟の距離感を保ち続けてくれた。


なんでもイチバンできる宇田グループのご令嬢と、彼女を支える冷たい美貌の深月財閥の御曹司。

だけど、この日から変わらずずっと由鶴がわたしを支える位置にいるのは、間違えて、わたしを超えてしまうことがないようにするためだ。

その健気な純真が、いつまでも、わたしたちの不平等な関係を壊さずにいる。

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