振り返って、接吻
だけど宇田の弱いポイントを突くのは、いつだって俺だ。宇田は、俺が隣にいる限り、〝普通の女の子としての感覚〟を捨てられることはないだろう。
「俺がオマエをサポートしているんじゃない、オマエが前から、後ろを歩く俺を支えてくれているんだよ」
みんな、どうしてこんな簡単なことに気付かないんだ。そう思うけど、俺だけが知っていれば良いなとも思う。
恋愛は楽しいことばかりじゃなくて、苦しいこともあると言う。たしかに、そうかもしれない。だって、こんなにくるしい。
宇田と過ごす時間は、いつだつて負の感情と隣り合わせだ。
だけど宇田から与えられるものならば、俺にとってはそれさえも甘美なのだから、どうしようもない。
宇田は汗をかいたアイスコーヒーのグラスを指で拭いながら、さっきとは違う軽い雰囲気で口を開いた。
「ほんとは、謝りたいこともいっぱいある」