振り返って、接吻
第5話
壁に掛けられている時計を見れば、12時を回っている。
もう、俺は風呂にも入った。いまは宇田が入浴中だ、今日も長い。しんでるのかな、わくわく。
宇田が帰宅早々に作ってくれたおつまみメシは相変わらず美味しかったし、相変わらず俺は「まずい」とコメントした。代り映えのしない日常。
ちなみに、さっき寄ったスーパーでは、財布を取り出していた宇田を制したら、しっかり争いにもなった。
内容はこんなかんじ。
「由鶴に車出してもらってるし、ここはわたしが払うよ!」
「いいって、帰ったら料理するのオマエなんだから」
「それくらいは、由鶴の家に泊めてもらうわけだから当然だよ!」
「いや、なんで泊まるの決定事項なの」
「いまからお酒のむでしょ?!」
「タクシー使いなよまじで」
「それなら最初から呼び出してないよ!」
もちろん、語尾強いほうが宇田だ。わかっていると思うけど念のため。俺は喋りに抑揚がないことで定評のある男だよ。
そしてこの結果として、俺らは割り勘で支払った。こうなったら、きっちりと一円単位で割り切るのが俺たちだ。