振り返って、接吻
俺が動けないのは、激しい行為の甘い疲労なんかのせいじゃない。
完全に、宇田凛子のペースに飲み込まれていた。
そんな俺を誑かすように、宇田は俺の頬に手を添えて、あまく言い聞かせるように囁いた。
「わたしたち、政略結婚しようか」
俺らの関係がこんなにも歪んでいるのは、ぜんぶ、俺のせいだ。
———はるか昔の俺が、軽率に、宇田に惚れてしまったのがわるい。
ごめん。
甘く蒸された情事後の寝室に響くのは、ゆるやかな寝息に被せられた抜け殻のような謝罪。情けなく震える自分の声は、なみだを流せずに泣いていた。