振り返って、接吻
それから数時間後。
ややフォーマル装いの俺らは、自家用車でパーティー会場に着いた。茅根や千賀とも合流する。もちろん、出会ってすぐに茅根から散々からかわれたことは特筆すべきでない。深夜の会話を明るい時間に持ち出すな。
ちなみに宅配で届いた2人分の衣装は、鞄から靴まで宇田が選び抜いたものだった。お揃いのブランド、いつかにふたりぶんの採寸がされてあったらしい。サイズはぴったりだったけど、宇田とセットの衣装なのはそれなりに恥ずかしいお年頃だ。
久しぶりに着るオフホワイトは、なんだか茅根の服を借りているような気分だ。俺には、黒のほうがしっくりくる。
宇田は白いドレスを堂々と着こなしていて、「新婦さんみたいで素敵です」という千賀のお世辞に対し「ゆづるんと合わせて新郎新婦なの」という気持ち悪い冗談をかましていた。
冗談、だよね?
ベッドでの真剣な宇田が脳裏に過って、それを搔き消すように周囲を見渡した。
パーティー会場は薄暗くて、上品ながらもDJなんかもいるおしゃれな空間だ。春を先取りしているらしく、色とりどりの花がたくさん咲いている。
それから、どういった基準で招いてるのか知らないけど、口紅を試している彼女たちがさらに華やかな空間にしているのは事実だ。
そんなゲイノウジンと並んで写真にうつる宇田や茅根は、彼女たちに勝るとも劣らない美貌だと再確認した。ちなみに宇田はここで撮られた写真が雑誌やテレビでも使われることを意識して、日々準備していた。小顔マッサージの効果は正直わからない。