振り返って、接吻
宇田が生徒会長、俺は生徒会副会長。
幼稚園の頃から狭いコミュニティに閉じ込められた裕福な生徒たちは、日本屈指の名家に生まれただけの俺らを妙に崇めていた。
品行方正、成績優秀、眉目秀麗。学校という社会で地位を得るのは、俺らにとって呼吸をするように容易いことだ。
俺は他人から無遠慮に与えられるだけの評価に、なんの価値も見出さなかったけれど、宇田は違う。他人からかけられる言葉ひとつひとつを、丁寧に、大切そうに受け取っていた。
宇田が生徒会長になりたいと言いだして、俺に副会長になれと言ったから、いつの間にか俺は副会長になっていた。中等部の時もそうだった気がする。
俺と宇田の間には、このときすでに関係性ができあがっていた。
宇田と俺とは、ふたりでひとり。陽と陰。正義と悪。