振り返って、接吻

「いつもね、由鶴くんが彼氏って言うと羨ましがられるんだ」



恋人が、俺の冷たい指先を自分のそれと甘ったるく絡めながら言った。視線に熱が込められているのを感じて、宇田もこうだったらいいのに、とかぼんやりと考えてしまうのでもう末期だ。



「なら、よかった」

「自慢の彼氏なの、だーいすき」



恋人との、放課後デート。

といっても、暑さに弱い俺を気遣ってくれたのか、大学生の恋人が独り暮らししている自宅にお邪魔させてくれた。

ワンルームのマンション。女の子らしい家具の配置。今頃宇田は、お嬢様らしく習い事に励んでいるのだろうか。


生徒会室のときから欲求が溜まっていた俺は、ゆるい会話の最中も、早くシたいなーとか最低なことを考えていたけれど、理性なく盛るほどこの女に溺れているわけではなかった。


すると、淡い桜色のマニキュアが塗られた細い指が、俺のワイシャツのボタンを外してきた。それを黙って上から眺める。



「由鶴くんってさあ、ほんとに高校生とは思えないくらい色気あるよねえ」


まあ、そっちがその気なら、俺は利用させてもらうけど。



露出した腕を引いて、何度か使ったことのあるベッドに恋人を押し倒した。俺は覆い被さるように乗り上げながら、彼女をうつ伏せにさせる。

顔を見ながらするのは、あまり好きじゃない。見たくないのか、見られたくないのか分からなないけど。

それに俺は、彼女のふわふわと長い髪をわりと気に入っていた。


服を脱がせて弱いところを容赦なく刺激すると、恋人は呆気なく快楽に落ちた。シーツを強く握りしめて喘ぐ姿を眺める。


喘ぎ声、卑猥な水音、空調の機械音。甘ったるく湿った空気。


ゆるくパーマのかけられた髪を撫でてみると、宇田の細くて絡まりやすい黒髪を思いだした。ああ、萎えるってば。


赤く染まった背中を見下ろしている自分の感情は、ほぼ無に近い。ただ、快楽を追いかけて腰を振るような、こんなの、本能で生きる獣だ。

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