妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「闇の魔力……」

 感じられるのは、本から放たれている闇の魔力だけだ。
 何の変哲もないように見える本から、私はしっかりとそれを感じている。

「フェルーナ殿!」
「アグナヴァン様、大丈夫です。やることは変わりません」

 一瞬怯んだ私だったが、すぐに思い直した。
 この本から闇の魔力を感じようが関係はない。私は、この本を消滅させるだけだ。
 そう思いながら、私は本に魔法を当てた。すると、不思議なことが起こった。

『きゃああああああああ!』
「……何?」

 突然、部屋に女性の叫び声が響いてきた。
 それはどうやら、私の目の前にある本から出ている声のようだ。

「何が起こっているのだ?」
「それは、私にもわかりません……」

 さらに私達の目の前では、変化が起こっていた。
 本から靄のようなものが出てきたのである。
 とりあえず、私は様子を見ることにした。何が起こるかわからないので、警戒しながら成り行きを見守ることにしたのだ。
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