妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
『忌々しい……この私が!』

 しばらく見守っていると、本から半透明な女性が現れた。
 女性は、私と同じくらいの年齢に見える。
 とはいえ、本から半透明の姿で出てきたということは、彼女は普通の人間であるとは思えない。この世のものではない存在のように思える。

『……』

 そんな彼女は、鋭い目つきで私のことを睨みつけてきた。
 それは、今の攻撃に対する憎しみだろうか。
 いや、なんとなく違う気がする。彼女のその視線からは、何か深き因縁を感じるのだ。

「……あなたは一体、何者なのかしら?」
『……』
「答えてくれないのね……」

 私は、半透明な女性に質問を投げかけた。
 しかし、彼女は答えてくれない。鋭い視線を投げかけてくるだけである。

「答えてくれないというなら、こちらにも考えがあるわ」
『……?』
「私の目を見なさい」
『こ、これは……?』

 このまま彼女はきっと何も答えてくれない。そう思った私は、彼女に強制的に答えてもらうことにした。
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