妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 どうやら、エルネリスは幽霊のような存在であるらしい。
 それに、この本は別に彼女にとって特別なものではく、偶然近くにあっただけのものであるようだ。
 ということは、彼女は闇の魔法に長けているという訳ではないのかもしれない。

「その未練とは一体何かしら?」
『私は、姉に殺された……その憎しみで、現世に留まった』
「姉に殺された? あなたは、その姉に復讐しようとしているということ?」
『……正確には少し違う。姉は、既に亡くなっている。とっくの昔にね』

 私の質問に、エルネリスは口の端を歪めてそう答えた。
 恐らく、彼女は結構昔の人なのだろう。長い間、現世に留まっているのではないだろうか。
 しかし、復讐するべき対象である姉が亡くなっているというのに、留まっているという事実は気になる所だ。一体、どうして彼女は成仏しないのだろうか。

「復讐するべき姉が亡くなっているというのに、どうしてあなたは現世に留まり続けているの?」
『それは、私の復讐が終わっていないからよ』
「それは、どういうことなのかしら?」
『あなた達も、私の復讐対象ということよ』
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