妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 私は、拘束したまま馬車に乗せられて、国外まで連れて来られていた。
 名ばかりの裁判によって、私には国外追放が言い渡された。今から、私は国外の森に放たれることになるのだ。

「さあ、出ろ!」
「うっ……」

 兵士によって、私は馬車から摘まみ出された。
 私は、ふらふらとしながら辺りをうろつく。拘束されているせいで、体の自由があまり効かないのだ。
 それに、視界も封じられている。私は今、兵士に従うしかないのだ。

「こっちだ」
「……」

 私は、兵士に引っ張られながら歩いていく。
 恐らく、この先には森があるのだろう。今はまだ整備された街道にいるはずだが、私が放り出されるのは森の中なのだ。

「……ここでいいだろう」

 しばらく歩いて、兵士は足を止めた。
 どれくらい歩いたのかは、正直よくわかっていない。だが、それなりの距離は歩いているはずだ。

「拘束は解いてやる。これも、規則だからな」
「……」

 兵士は、私の拘束をゆっくりと解いた。私は、それに安心する。拘束を解かれない可能性もあると思っていたからだ。
 流石に、そこはきちんとしていたようである。
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