妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「さあ、行け。言っておくが、ドルマニア王国はお前の入国を決して認めない。国に戻っても無駄だと認識しておけ」
「……わかっています」
「それでは、我々はこれで戻らせてもらう。精々、努力するのだな。運が良ければ、生き延びる可能性もある」

 兵士の一人が手を上げると、彼らの体が光り輝いた。
 その直後、彼らは消えていく。魔法によって、ドルマニア王国に帰還したのだ。

 という訳で、私は森の中に一人取り残されることになった。
 森の中には魔物がいる。国と国を繋ぐ道は、人通りが多いため滅多に姿を現さないが、森の中は彼らの領域だ。
 そんな所に一人でいる人間は、格好の得物である。そのため、まずはこの森から出ることを考えなければならない。

「魔力があれば、どうとでもなったけど……」

 私の魔力は、恐らくホーネリアに奪われた。
 その魔力さえあれば、この窮地も脱することができただろう。
 私は、ドルマニア王国で最も優れた魔術師である。そんな私なら、魔法で大抵のことは解決できたのだ。
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