妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 私は、森の中を進んでいた。
 魔力は多少戻ったが、まだ完全という訳ではない。そのため、とりあえず歩いて進んでいるのだ。

「魔物の気配はする……でも、襲ってこない?」

 当然のことではあるが、最低限の魔法は行使している。探知魔法で、いつ魔物が襲って来てもいいように備えているのだ。
 先程から、魔物の気配は察知している。だが、魔物は出て来ない。もしかして、魔物は私のことを恐れているのだろうか。

 魔物は、非常に獰猛である。しかし、頭が悪い訳ではない。
 特に、魔力に対して彼らは敏感だ。私の体に宿る大きな魔力を恐れて近寄って来ないというのは、それ程間違った推測ではないだろう。

「こちらとしては、好都合かしら……」

 魔物が襲って来ないのは、私にとって嬉しいことだ。
 襲って来られても問題はないが、襲って来ないに越したことはない。

「さて……」

 私がこれから向かうのは、ドルマニア王国の隣国のスウェンド王国である。
 牢屋の中で書いた手紙で、布石は打っておいた。それが上手く機能してくれていれば、助かる見込みはあるだろう。
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