妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 よく考えてみれば、私はドルマニア王国の機密情報の塊だ。優れた魔術師であるだけでなく、隣国の秘密も持っているとなると、助け出すという選択を取るのはそれ程不思議なものではないのかもしれない。

「もっとも、殿下の個人的な気持ちもあったようですが……」
「個人的な気持ち?」
「ええ、王子殿下はあなたが無罪であると思っているようです」
「アグナヴァン様が……」

 アグナヴァン様の思いに、私は少し感動していた。
 彼は以前から、私の能力を高く評価してくれていた。ドルマニア王国の聖女として何度か会い、その度に賞賛してくれたものだ。
 しかし、まさかそこまで信用してくれているとは思っていなかった。ドルマニア王国ではほとんど信用されなかったため、涙が出てきそうだ。

 何はともあれ、これで私の安全は保障されたということになる。
 もっと大変だと思っていたが、案外スムーズにことが進んだのは、嬉しい誤算だ。
 こうして、私はスウェンド王国に保護されることになったのだった。
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