妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「ええ、それはもちろんです。スウェンド王国には、助けてもらった恩義があります。この国のためにできることがあるなら、喜んでします」

 アグナヴァン様の言葉に、私は力強く頷く。
 スウェンド王国に、私は助けられた。その恩は、返したいと思っている。
 幸いにも、魔力は戻っている。私にできることは、色々とあるはずだ。

「さて、実の所、あなたにもう一つ頼みたいことがある」
「頼みたいこと? なんですか?」

 そこで、アグナヴァン様は神妙な顔でそんなことを言ってきた。
 その表情に、私は少し緊張する。その表情からして、何が重要なことを話すつもりなのだろう。何か問題でもあったのだろうか。

「私は、あなたのことを尊敬している。それは、何度も言ってきたことだ。あなたも、覚えているだろう」
「……ええ、そうですね。よく覚えています」
「私があなたのどんな所を尊敬しているのか、改めて言っておこう。私は、あなたの精神を尊敬しているのだ」
「私の精神……」
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