妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 アグナヴァン様は、私の目を真っ直ぐに見てきた。
 その眼力に、私は思わず目をそらしそうになる。
 だが、そらしてはならない。彼の強い思いから目をそらす。それは、とても失礼なことだろう。

「優れた魔力を持ちながら、あなたは気高き精神を持っている。力に溺れることなく、それを正しいことに使おうとするその心意気は、優れたものであるだろう」
「そこまで褒められるような人間であるかというのは、少々自信がありませんね……」
「自らの優れた点というものは、自分では中々見えてこないものだ」

 アグナヴァン様は、私のことを称賛してくれた。
 彼は、前々からそうである。会った数は、それ程多くないはずなのだが、何故か私の評価がとても高いのだ。
 それは私の優れた点を、私以上によくわかっているということなのかもしれない。

「そんなあなたに、私は是非とも頼みたい……私はあなたに妻になってもらいたいのだ」
「妻……」
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