妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「アグナヴァン様、あなたには私の素直な気持ちをお伝えします」
「……ああ、頼む」
「私は、あなたからの申し出を非常に嬉しく思います。それを受けたい……そう思っています」
「……ありがとう」

 アグナヴァン様は、私に短くお礼を言ってきた。
 その顔は少し綻んでいる。喜んでいるということなのだろう。

「……これから、どうかよろしく頼む」
「……はい」
「自分の気持ちが届くというのは、嬉しいものだな……舞い上がっている自分がいる」
「……ふふ、案外可愛らしいのですね」

 アグナヴァン様から差し出された手を、私はゆっくりと握った。
 これから私達は、とても大変だろう。だが、きっと大丈夫だ。彼と一緒なら、それも乗り越えられる。そんな気がする。
 こうして、私はアグナヴァン様と婚約することになった。スウェンド王国の時期王妃となったのである。
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