妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 私は、スウェンド王国の王城で暮らすことになった。
 私がここで暮らすことになったのは、私に与えられた役割が関係している。私は、この国の聖女の補佐をすることになったのだ。

「スウェンド王国の聖女……エルムルナ様」

 スウェンド王国の聖女のことは、私も知っている。
 ドルマニア王国とスウェンド王国は、同盟を組んでおり、交流も盛んだった。そのため、彼女とも何度か会ったことがあるのだ。

 彼女は、とても温和な人だったと記憶している。
 ただ、そんな彼女でも罪人である私を受け入れてくれるかは微妙な所だ。
 一般的に考えて、罪人というのは心証が悪い。いくら彼女が優しい人であっても、私のことを信用できなかったとしても、それは仕方ないことである。

「……失礼します。エルムルナ様、フェルーナです」
「フェルーナさんですか? どうぞ、入ってください」
「はい……」

 私の呼びかけに、エルムルナ様は明るい声で応えてくれた。
 とりあえず、私は部屋の中に入っていく。すると、見覚えのある顔が見えてくる。
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