妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「そうか……急な訪問であるということは、何か大変なことがあったのかもしれない。後のことは、僕がなんとかするから、早く行ってあげた方がいい」
「そんな……グラッセン様に、迷惑はかけられません」
「いや、問題ない。僕だって、王子だ。こういう時に、どうすればいいかは心得ている。君は、何も心配しなくていい。早く、妹さんの所に向かうんだ」
「……わかりました」

 私は、ゆっくりと頷いた。
 確かに、彼はこの国の第三王子である。こういう時にどう動くべきかを知らないはずはない。
 そんな彼に、全てを任せて妹の元に向かう。今は、それでいいはずだ。

 もしかしたら、本当に何か大変なことが起こっている可能性もある。
 不仲な妹が、連絡もせずにわざわざ訪ねてくるということは、そういうことだ。
 こうして、私は急いでホーネリアの元に向かうのだった。
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