妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 客室に着いた時、ホーネリアはとても穏やかな顔で座っていた。
 その表情を見て、私は理解する。何か重大なことがあったという訳ではないことを。

 ただ、彼女の表情に違和感は覚えた。
 なぜなら、彼女は私と会う時いつも不服そうな顔をするからだ。

「……ホーネリア、急にどうしたの? あなたが、王城を訪ねてくるなんて、珍しいじゃない」
「……すみません、お姉様。私、どうしてもお姉様と話したいことがあったのです」
「話したいこと? それは連絡もなく来る程、重要なことなのかしら?」
「ああ、私としたことが……急に思い立ったものですから、連絡するべきだと気付きませんでした。本当に、申し訳ありません」
「い、いえ、別に構わないわ。それ程に、重要なことであるなら、仕方ないのかもしれないし……」

 会話をしてみて、私はさらに違和感を覚えることになった。
 いつもの彼女は、こんなにしおらしくない。私に対して、嫌味ばかり言ってきて、こんな風に謝るなどということはあり得ないことだ。

「それで、その要件とはなんなのかしら?」
「その……今までの非礼を詫びようと思って」
「え?」

 ホーネリアの口から出た言葉に、私は驚きを隠せなかった。
 今までの非礼を詫びる。それは、信じられないことだった。まさか、彼女が謝りに来たなんて、まったく考えていなかったことである。
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