妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「……私は、お姉様にたくさんひどいことを言いました。ひどいことだって、したと思います。でも、それを謝罪したいのです。本当に申し訳ありませんでした。どうして、あんなことを言ってしまったのか……今では、まったくわかりません」
「え、えっと……」

 妹の謝罪に、私は固まってしまった。
 彼女のあまりの豹変に言葉が出なくなってしまったのだ。

 彼女の心境に、何かしらの変化が起こったと考えるべきなのだろうか。
 もしもそうなら、私としては少し嬉しいことだ。曲がりなりにも、彼女は私の妹である。いつの間にか随分と嫌われていたが、それが元に戻るにこしたことはない。

 彼女の態度に腹は立っていたが、私は家族の情というものを忘れた訳ではない。もしも、彼女がただの妹に戻ってくれるなら、私も姉に戻りたいと思っていた。
 しかしながら、それがこんなにも突然やって来たということが信じられず、中々言葉が出てこない。
 だが、答えなければならないだろう。彼女だって、それなりの覚悟で今の言葉を放ったはずだ。私も、呆けている場合ではない。
< 6 / 118 >

この作品をシェア

pagetop