妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 アグナヴァン様の言葉を聞き、エルムルナ様は少し落ち込んでいた。
 しかし、それは仕方ないことだろう。誰も闇の魔力なんて知らなかったのだ。それを止めることができる訳はない。

「パストマン教授は、それをどうにかするために動いているようです。ただ、有識者がどれだけ集まっても、闇の魔力を払うことは難しいようです」
「……闇の魔力は、非常に凶悪なものです。魔力が低い者が対処するのは、かなり困難であるといえるでしょう」
「方法は、ないのですか?」
「……ない訳ではありません。強力な魔力を持つ者が、浄化の魔法を使えば、闇の魔力を払うことはできるでしょう。例えば、私やフェルーナさんなら……」

 エルムルナ様は、真剣な顔でそう呟いた。
 その視線は、私に向いている。それは恐らく、私に闇の魔力を払わせたいということなのだろう。
 私は、少し考える。ドルマニア王国には、恨みを抱いている。そんな私に、その役目が果たせるのか。そう思ってしまったのだ。
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