妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「……ご心配ありがとうございます、アグナヴァン様」
「いや、俺は……」
「私なら大丈夫です。たくさんの人の命がかかっているのですから、私も細かいことを気にするつもりはありません」
「……そうか」

 私の言葉に、アグナヴァン様は辛そうな顔をしていた。
 ドルマニア王国のことを私に背負わせるということに、彼は気が進んでいないのだろう。
 しかし、私以外にそれができる人はいない。そう理解している彼は、そういう表情しかできないのだろう。

「すまない……あなたに、背負わせてしまって」
「大丈夫です……エルムルナ様、浄化の魔法というのは難しいものなのですか?」
「いえ、それ程ではありません。あなたなら、すぐに修得できるでしょう」
「やり方を教えていただけますか?」
「もちろんです」

 私は、やる気を出すことにした。
 少しでも、アグナヴァン様を元気づけたかったからだ。
 それに、私自身の気分もある。こうやって自分を奮い立たせなければ、私も折れてしまいそうな気がしたのだ。
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