妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 私は、アグナヴァン様とともにドルマニア王国に向かっていた。
 第一王子である彼が、他国に行くというのは結構な大事だ。そのため、たくさんの護衛達に私は囲まれている。
 一応、私はアグナヴァン様の婚約者だ。非公式ではあるが、彼が特に隠していないこともあって、護衛達の数名はそれを知っている。
 だからなのかわからないが、護衛達は私の行動にも常に注意を払っていた。私もかなり高い身分だったが、それでもこのように護衛されるというのには少し面を食らってしまう。

「それでは、こちらです」
「あ、はい……」

 護衛の呼びかけに答えて、私はとある店の中に入っていく。
 ドルマニア王国は隣国ではあるが、流石に一日で着くことはできない。私一人なら、飛んでいくこともできなくはないのだが、今回は馬車での移動であるため、時間がかかるのだ。 そのため、今日は宿で一夜を明かすのである。

「フェルーナ様の部屋は、こちらです」
「わかりました」
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