妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「グラッセン様……」
「フェルーナさん、僕は今まであなたのことを信じていました。しかし、あなたは悪魔であった。非常に残念です」
「……どういうことですか?」

 グラッセン様の言葉に、私はさらに困惑することになった。
 私が悪魔、彼は何を言っているのだろうか。言葉のニュアンスからして、それは恐らく私がグラッセン様を騙していたと言いたいのだろうが、私にそんな覚えはない。

「この期に及んで、まだご自分の罪を認めないつもりですか?」
「何を言っているのか、私にはわかりません」
「仕方ありませんね……ホーネリアさん、入ってきてください」

 グラッセン様の呼びかけに、奥の方からホーネリアが現れた。
 彼女の表情も、昨日までとはまったく違う。それは、私にいつも向けている敵意に満ちた表情だ。

「お姉様、いい気味ですね」
「ホーネリア、どうしてしまったの? 昨日までのあなたとはまるで大違いじゃない」
「あれは演技ですよ。あなたに、私が屈伏していると信じ込ませるための嘘です」
「な、何を……」
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