妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「そこの兵士、少しいいか?」
「はい、なんでしょうか?」
「パストマン教授の居場所を知らないか?」
「教授なら、大樹の調査をなさっていると思います」
「そうか、ありがとう」

 私が誰かに聞く前に、アグナヴァン様が近くの兵士に居場所を聞いてくれた。
 先生は、休む前に言っていた通り、大樹の調査を行っているようだ。それなら、とてもわかりやすい。すぐに会うことができそうだ。

「……そういえば、大樹の周りはまだ探していなかったな」
「そうですね……」

 アグナヴァン様の言っている通り、大樹の周辺はまだ調べていない。
 ただ、あの周りは今人が多いはずだ。本が動いていたりしたら、確実に誰かに見つかるだろう。
 だが、そもそもの前提がおかしいのかもしれない。誰かが持っているというなら、その予測も意味もないのだから、あまりそういったことは考える必要がないだろう。

「さて、それでは行くとしようか」
「はい」

 私は、アグナヴァン様の言葉にゆっくりと頷いた。
 とにかく、全ては先生と話してから考えるとしよう。彼の知識の量なら、きっと何かがわかるだろう。
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