弁護士は相談料として愛を請求する

 のんは私の肩を抱き寄せた。私は、のんの手を払って言った。

「佐竹君。心配してくれてありがとう。のんのことは私も信用はしているけど、女性関係は昔から知らないことだらけで不安も実はあるの。志穗もいなくなるし、何かあったら相談するね」

「ああ、そうしろ。何でも相談してくれ」

「うん。頼りにしてます。なんか本当に弁護士っぽいね」

「そうかあ?まあ、倉田よりいい女が現れるまではひとりでいるよ」

「……黙って聞いていれば、おまえらふざけんなよ。すず、俺が浮気するという前提で、しかもそれを佐竹に相談するってどういうことだ、おい」

 腕を引っ張るとこちらを睨んで聞いたことのないような声で言った。まずい、これはまずいと長年の付き合いでピンときた。

「や、やだな、のんったら。冗談だよ、言葉の綾。空気読んでよ。喧嘩は良くないからね、もう……」

 肩を軽く叩いたら、逆の腕を佐竹君に握られた。
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