弁護士は相談料として愛を請求する

 私を完璧に無視してのんの腕を取った。となりの大臣はそんな彼女を可愛がっているんだろう、横目に見て私に目を移した。

「お嬢さん。初めて会ったが古川弁護士がエスコートとはどちらのお嬢様かな?」

「……あ、初めまして。私は倉田鈴音といいます」

「大臣、彼女は私の大切な人です。今日初めてご紹介致します」

「何それ?聞いてないわよ。ねえ、おじいさま」

「落ち着きなさい、美姫」

「古川君、それで彼女は交際相手ということなのかな?驚いたな。君は相手がいないと先週聞いたばかりだったのに……」

「それは情報が古かったですね。姉達に僕のプライベートを逐一話しているわけではないので。彼女は元々幼馴染みだったんですが、僕がようやく口説き落として付き合いはじめたんです」

 びっくりする。のんの顔を見上げてしまった。そんな私を見て目の前のふたりはいぶかしげにしている。まずい。
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