弁護士は相談料として愛を請求する
所長は面食いだし、絶対採るに決まってる。俺は頭が痛かった。
翌週。恐れていたことが現実となって現れた。
「今日から新しく入ってもらうパラリーガルの女性を紹介します。三枝祐子さん。すでに他の事務所で五年経験があるそうです」
ああ、嘘だろ。祐子はみんなの前で無敵の笑顔で挨拶を始めた。
「実は、古川先生は大学の同級生でよく知る相手です。彼が司法試験に合格してすでに活躍されているのを知って、俄然やる気が出てきました。もう一度勉強し直して私も司法試験を目指します」
おおーと皆から拍手と、どういう関係だったんだー?というわざとらしい質問が飛んできた。女性スタッフが興味津々だ。
すると事情を知っているらしい所長がひと言付け加えた。
「まあ、古川先生は堂本副社長の大事な義理の弟さんだし、この間、交際相手の彼女を紹介して一波乱ようやく終わったところだからね。少し、静かにしていてもらいたいなと思ってるよ」
「……もちろんです」
祐子も、周りも静かになった。祐子は別な弁護士の担当についた。よかった。助かった。
「古川先生、ちょっと……」
所長に呼ばれた。