弁護士は相談料として愛を請求する

女三人の遭遇

 
 その日は久しぶりに志穗が上京してきたので一緒に食事をした。

 宝田さんとのことも、心配だけかけていたので報告をした。

 店を出たところで志穗が涼君に電話を始めたので、私は立ち止まって待っていた。

 すると男の人の声が通りの向こう側の薄暗い細い路地から聞こえた。つい、目をやってしまう。

 背中を向けた女性の腕をひねるように持ち上げている。彼女は逃げようとしているようだった。

「おい祐子。言っただろ、うちの奴とは別れる。今はぐちゃぐちゃ言っているが、そのうちたんまり慰謝料が入ってくれば静かになる。勝手に事務所やめて別れるとかいい加減にしろ」

「あなたの嘘にはうんざりよ。私を口説いていたとき、離婚調停中で、あと数日で決着すると言ったわよね。ところが別れるどころか元サヤに戻って、喧嘩したら私のせい?離れたんだから二度と連絡してこないで。奥さんがいる人はノーサンキューなの」

 すると彼女を両腕をつかんで壁に付け、男性は逃げようとする彼女の身体を抱き寄せている。
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