弁護士は相談料として愛を請求する

 志穗が思い出したように言う。彼女は志穗を見て笑った。

「そんなこともあったわね。今や遠い昔だわ……すごい偶然ね。昨日望とあなたの話をしたところだったのよ」

「え?」

「私ね、今週から望のいる事務所へ移籍したの。あの馬鹿弁護士と奥さんがうるさくてね。正直三ヶ月しか付き合ってなかったんだけど、本当に騙された。大学時代からいた事務所だったので移籍したくなかったんだけど、別れるために出たの」

 のんの事務所に移籍した?本当なの?それって、まさか……元サヤ?志穗が心配そうに私の顔を見ている。そして彼女に聞いてくれた。

「あの。失礼を承知でお聞きしますが、古川君とその、まさかまた……」

 彼女は志穗を見ながら苦笑い。

「久しぶりに会ったけどいい男になってるし、そんな気が起きなかったとはいえないわね。でも入所前に事務所長から釘を刺されたの。望には堂本副社長夫妻も認める交際相手がいて、入所するなら彼とのゴタゴタはやめてほしいって言われたわ」
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