弁護士は相談料として愛を請求する

「だってしょうがないだろ?男から身体に触れられるのが何より怖いのに、仕事がらみのあんたに本音が言えないんだよ。このままじゃ、やっとよくなってきていたのに昔に逆戻りだ。仕事でも男と付き合えなくなる。あんたのせいでね」

「大げさなんだよ、自意識過剰なんじゃないのか?別にそんなベタベタ触ってたわけじゃない。背中を押したりして階段上るのを助けたりしてただけだろ」

「だから、こいつはそういうのも自分が認めた相手じゃないと無理なんだよ」

 吹田さんの表情がどんどん険しくなって、見たことのないような怖い顔になってきた。もしかするとこれが本当の吹田さん?

 私はこちらを見た彼の目を見て、昔の記憶が被った。中学生の時に襲われかけた男の人。吹田さんくらいの歳の人だった。私は怖くてカタカタと震え始めた。

「おい、すず!?大丈夫か?」

 涙を流して震えている私を見て、吹田さんは目を大きく開いてびっくりしている。のんは私を胸の中に入れた。肩を震わせ泣き始めた私を立ち上がらせると、荷物を持って席を離れようとした。
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