弁護士は相談料として愛を請求する

 志穗とは木村さんというすずの親友だ。俺の親友の涼と付き合っている。涼は医者になった。高校時代から涼とは塾も一緒で、まあ成績が似ていてライバルだった。

 俺は口がうまいと自分でも自覚がある。だから弁護士になった。俺と真逆で普段は物静かな涼が俺を説教して叱った。これはただごとではない。痛感した。

 まあ、しょうがないよな、俺も夢中になって抱いて、そして変な話、どこか安心してしまった。

 だからといってやったことが正当化されるわけもない。『相談料』という言い訳ですずをしばらく縛る。これなら恋人にならず、別れないでいられるかもしれない。つくづく馬鹿だな俺。

 すずが保育園の取引先の男から言い寄られていたのは、最初のデートへ誘われたときに相談を受けて知っていた。

 いつもなら、相談通りにして結果を報告してくる。何故かあれからその報告がない。つまりは、俺の言うとおりに実行しなかったと言うことだ。

 大人の男に囲い込まれて、ホテルへ連れて行かれたというのに、まだその男と取引先という罠に惑わされてそのままになっているらしい。
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