その瞳に映るのは
* * *
新幹線が京都駅に着いたアナウンスが流れる。
慌ててガイドブックとかを仕舞おうとしてわたわたしていると、すっと帷くんが現れて、「かれんちゃん大丈夫? 荷物持つよ」と私のキャリーケースを運んでくれる。
「あ、ごめんね、帷くん」
「いいのいいの。可愛い女の子に重い荷物は似合わないでしょ。それより俺は、『ごめん』より『ありがとう』の方が聞きたいかな」そう言って微笑んでくれる帷くんは本当に優しくて、こういうところが大好きだな、とも思う。
「ありがとう」素直にお礼を言えば、「うん」とまた笑顔を見せてくれる。
「はいはい、二人の世界作ってないで。さっさと行くよ」と紗菜ちゃんはこんな時もクールだ。
「怒られちゃったね? じゃ、行こっか? お嬢さん」と、また手を差し伸べてくれる帷くんはやっぱり私にとって王子様だ。
まずホテルに大きな荷物を預けてチェックインをすませる。私は、もちろん紗菜ちゃんと二人部屋で同室だ。ホテルのふかふかのベッドにぼふっとダイブして、ごろごろしながら「あー。帷くん、なんであんなに格好いいんだろう」なんて日頃大きな声では言えないことを思いっきり口に出す。
「だーかーらー、そういうのは直接本人に言いなよ」
「紗菜ちゃん……。そんな簡単に言えたら苦労しないんだってばー」じたばたする私を見かねたのか、紗菜ちゃんは「そうだ。いいこと思いついた」と明るい声を出す。
「なぁに?」紗菜ちゃんのことだから、何かよからぬことを思いついたのかもしれない。
「最初に清水寺行くじゃない? そこでさ、私が班の他の男達引き連れてわざとはぐれるからさ、かれんは高瀬と二人っきりになりなよ。そこで、告白する! まさに清水の舞台から飛び降りるってやつでね?」
「えぇ! そんな、無理だよ」
「じゃあ、かれんはこのまま何もしないで高瀬に特別な女の子が出来てもいいのね? すぐに分かることだから今言っちゃうけど、高瀬の熱愛疑惑がさっきSNSで流れてきたよ」
「うそ?」私は慌ててベッドから起きあがる。
「ほんと。相手はドラマで共演した女優さんだって。マジなのかガセなのかは分かんないけど」
私も慌ててスマホで帷くんを検索する。本当だ。これって、この前共演してた女優さんだ。それを見た時、嫌だって心の底から思った。帷くんがあの優しい笑顔を見せるのも、骨張った細い手を繋ぐのも、お仕事だと思えば我慢出来る。
だけど、プライベートの帷くんが誰か、私じゃない女の子のものになってしまうのが悲しくて、心が張り裂けてしまいそうだ。その感情が、私の決意を促した。
「紗菜ちゃん。私、帷くんに告白する」
「うん。よく言った。それでこそ、私の親友」紗菜ちゃんとあつい抱擁を交わしてから、私達はホテルの部屋を出た。
新幹線が京都駅に着いたアナウンスが流れる。
慌ててガイドブックとかを仕舞おうとしてわたわたしていると、すっと帷くんが現れて、「かれんちゃん大丈夫? 荷物持つよ」と私のキャリーケースを運んでくれる。
「あ、ごめんね、帷くん」
「いいのいいの。可愛い女の子に重い荷物は似合わないでしょ。それより俺は、『ごめん』より『ありがとう』の方が聞きたいかな」そう言って微笑んでくれる帷くんは本当に優しくて、こういうところが大好きだな、とも思う。
「ありがとう」素直にお礼を言えば、「うん」とまた笑顔を見せてくれる。
「はいはい、二人の世界作ってないで。さっさと行くよ」と紗菜ちゃんはこんな時もクールだ。
「怒られちゃったね? じゃ、行こっか? お嬢さん」と、また手を差し伸べてくれる帷くんはやっぱり私にとって王子様だ。
まずホテルに大きな荷物を預けてチェックインをすませる。私は、もちろん紗菜ちゃんと二人部屋で同室だ。ホテルのふかふかのベッドにぼふっとダイブして、ごろごろしながら「あー。帷くん、なんであんなに格好いいんだろう」なんて日頃大きな声では言えないことを思いっきり口に出す。
「だーかーらー、そういうのは直接本人に言いなよ」
「紗菜ちゃん……。そんな簡単に言えたら苦労しないんだってばー」じたばたする私を見かねたのか、紗菜ちゃんは「そうだ。いいこと思いついた」と明るい声を出す。
「なぁに?」紗菜ちゃんのことだから、何かよからぬことを思いついたのかもしれない。
「最初に清水寺行くじゃない? そこでさ、私が班の他の男達引き連れてわざとはぐれるからさ、かれんは高瀬と二人っきりになりなよ。そこで、告白する! まさに清水の舞台から飛び降りるってやつでね?」
「えぇ! そんな、無理だよ」
「じゃあ、かれんはこのまま何もしないで高瀬に特別な女の子が出来てもいいのね? すぐに分かることだから今言っちゃうけど、高瀬の熱愛疑惑がさっきSNSで流れてきたよ」
「うそ?」私は慌ててベッドから起きあがる。
「ほんと。相手はドラマで共演した女優さんだって。マジなのかガセなのかは分かんないけど」
私も慌ててスマホで帷くんを検索する。本当だ。これって、この前共演してた女優さんだ。それを見た時、嫌だって心の底から思った。帷くんがあの優しい笑顔を見せるのも、骨張った細い手を繋ぐのも、お仕事だと思えば我慢出来る。
だけど、プライベートの帷くんが誰か、私じゃない女の子のものになってしまうのが悲しくて、心が張り裂けてしまいそうだ。その感情が、私の決意を促した。
「紗菜ちゃん。私、帷くんに告白する」
「うん。よく言った。それでこそ、私の親友」紗菜ちゃんとあつい抱擁を交わしてから、私達はホテルの部屋を出た。