社内恋愛を始めたところ、腹黒上司が激甘彼氏になりまして
松下side
松下side
■
定例会議を終え、自販機の前に立つと隣から手が伸びてきた。
「お疲れ様です。松下部長」
今回から会議のメンバーとなった朝霧がカフェオレを差し出す。
「甘い物がお好きなんですって? 妻から聞いてます」
「甘い物は好きだが、奢って貰うのは嫌いだね」
「そう言わずにどうぞ。部長には感謝しているんですよ」
営業畑で育った精神はちっとやそっとの嫌味など効きやしない。人懐っこい笑顔を向けてくる。
仕方なく缶を受け取り、側のベンチへ腰掛けた。会議の後はこうして休憩するのがルーティンだ。
「ご一緒しても?」
ブラックコーヒーを片手に朝霧は尋ねる。
「……どうぞ」
「じゃあ、失礼します」
「そんな畏まらなくていいよ。立場は同じなんだ、朝霧部長」
「いえ、俺がこうして居られるのはあなたという前例があったから」
一人分スペースを開け、腰掛ける。絶妙な距離感。もう少し近ければ追っ払ったし、遠かったなら会話に応じなかったのに。
朝霧は勘の良い男だ。僕など引き合いに出さずとも出世は約束されていた。
「過ぎた謙遜は嫌味になるぞ。気をつけるんだな。やたら下手に出て舐められたら始末が悪い。年長者相手だろうと締めるところはきっちり締めろ」
アドバイスというより釘を刺す意味合いが強い。
■
定例会議を終え、自販機の前に立つと隣から手が伸びてきた。
「お疲れ様です。松下部長」
今回から会議のメンバーとなった朝霧がカフェオレを差し出す。
「甘い物がお好きなんですって? 妻から聞いてます」
「甘い物は好きだが、奢って貰うのは嫌いだね」
「そう言わずにどうぞ。部長には感謝しているんですよ」
営業畑で育った精神はちっとやそっとの嫌味など効きやしない。人懐っこい笑顔を向けてくる。
仕方なく缶を受け取り、側のベンチへ腰掛けた。会議の後はこうして休憩するのがルーティンだ。
「ご一緒しても?」
ブラックコーヒーを片手に朝霧は尋ねる。
「……どうぞ」
「じゃあ、失礼します」
「そんな畏まらなくていいよ。立場は同じなんだ、朝霧部長」
「いえ、俺がこうして居られるのはあなたという前例があったから」
一人分スペースを開け、腰掛ける。絶妙な距離感。もう少し近ければ追っ払ったし、遠かったなら会話に応じなかったのに。
朝霧は勘の良い男だ。僕など引き合いに出さずとも出世は約束されていた。
「過ぎた謙遜は嫌味になるぞ。気をつけるんだな。やたら下手に出て舐められたら始末が悪い。年長者相手だろうと締めるところはきっちり締めろ」
アドバイスというより釘を刺す意味合いが強い。