社内恋愛を始めたところ、腹黒上司が激甘彼氏になりまして
「……すまない。朝霧の昇進にケチをつけたいんじゃないんだ。一個人の感想と流してくれ」

 朝霧の洞察力を侮っていた。僕は俯き、話題を反らす。
 貰ったカフェオレに『ねぇかわ』が印刷されていて、山猫をじっと見詰める。

「謝らないで下さい、部長が先輩贔屓なのは承知してました。それに部長を怒らせるような言い回しをしました」

「へぇ、僕をからかって無事でいられると? 岡崎に妙な真似をしてみろ、全力で潰してやる。あの頃と違って今ならそれが可能だ」

 姿勢は変えず、圧を込め忠告しておく。本気だ、冗談ではない雰囲気を出しながら。

「はぁ、そこまで大事であれば直属にすればいいのでは?」

「逆に聞くけど、朝霧は奥さんを部下にしたいのか? 営業部で頑張っている岡崎を自分の都合で引き戻せないだろ。もしも彼女を転属させれば困るのは朝霧だよ」

「はい、岡崎先輩は我が部の貴重な戦力。直属にすればと言いましたが、渡すとは言ってません。あと妻を部下にしたくはないですね、部長曰く『社内恋愛は作業効率を下げる』でしたっけ?」
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