初恋婚〜幼馴染のエリート同期と離れられなくなりました～

「え……？」
今日という特別な日にプロポーズを期待していた優莉奈はポカンと口を開けて固まった。

ピアノ演奏の音が遠くなる。
優莉奈の心の中ではベートーベンの運命が鳴り響いて雷雨が轟いた。

「本当にごめん！　他に好きな子ができたんだ！」
懇願するように言う大ちゃんにようやく現実に引き戻される。

「好きな子って？」
「同じ職場の子。新卒のかわいい子なんだ」

「で、でも、どうしてその子のことが好きになったの？」
質問しながらようやく胸がシクシクと痛み始める。

優莉奈は胸の上の服をギュッと握りしめた。
「俺、工場勤務だし。だけど優莉奈は大手お菓子メーカーだし。本当は最初から引け目があったんだ。給料だってさ、優莉奈のほうが多いし」