初恋婚〜幼馴染のエリート同期と離れられなくなりました~
「うん。またね!」
さっきまで泣いていた優莉奈が笑顔で俊介に手を振り、母親の元へ駆け戻っていく。

「ちょっと優莉奈、なにがあったの?」
なにを言っても泣き続けていた我が子の豹変ぶりに驚き、母親が目を丸くしている。

だけど優莉奈は笑顔のままで答えなかった。
これは優莉奈と俊介との秘密だ。

母親はわけがわからず首を傾げていたが、安堵したようにため息を吐き出した。
とにかく、これでようやく出発することができる。

「俊介くん、またね!」
「優莉奈ちゃん、またね!」

車の後部座席に乗り込んだ優莉奈が窓から手をふる。
俊介もそれに振りかえした。

運転手のお父さんが危ないから窓を閉めなさいと言ったので、今度は車の中から後ろを振り向いて手を振った。
ばいばいは言わない。

またねっていう。
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