神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
残念ながら、マシュリさんの契約している魔物が何なのかは分からない。
私も一度しか見られなかったし、それに…何度も言うように、不意打ちだったから。
でも、あの異形は間違いなく、魔物のそれだ。
そして魔物なら…過剰に恐れる必要はない、はずだ。
何せ聖魔騎士団魔導部隊には、吐月さんがいる。
彼が契約しているのは、冥界最上位の魔物と呼ばれるベルフェゴールさんだ。
更に吐月さんは、あのシルナ学院長ですら「初めて見た」と言わしめるほど優れた召喚魔導師である。
だからこそ、ベルフェゴールさんという高位の魔物と契約出来たのだろう。
逆に言えば、吐月さんクラスの召喚魔導師は、滅多に存在しないということだ。
聖魔騎士団魔導部隊にいる別の召喚魔導師さんも、吐月さんは特別だと口を揃えて言っている。
マシュリさんが、いかに優秀な召喚魔導師であろうとも。
でも、吐月さんほどではない。
それが分かっているなら、過剰に恐れる必要はない。
吐月さんとまともに戦って勝てる気はしないけど、でもマシュリさんは、吐月さんほどの召喚魔導師ではないろう。
だったら、私にも充分勝ち目はある。
契約している魔物の種類が分からないのが、唯一の不安材料だ。
何せ冥界には、ナジュさんが契約している、不死身の女王さえ存在しているのだから。
さすがに不死身の魔物は、リリスさんくらいだと思うけれど…。
何かしら、特殊な能力を持っている魔物である可能性はある。
しかし、それはつまり、その能力さえ警戒していれば良いということ。
…いずれにしても、私はおめおめとマシュリさんに殺されるつもりはない。
「これで最後の警告です。私を解放してください。さもなければ…手荒な手段を使ってでも、私はあなたを止めます」
私は強い敵意を持って、マシュリさんにそう言った。
マシュリさんは少しも怯んだ様子はなく、私をじっと見つめた。
…自分が負けるはずはない、と高を括っている顔ですね。
良いでしょう。あなたがそのつもりなら…。
…しかし。
「…君は二つ、勘違いをしている」
と、マシュリさんは言った。
「…何です?」
「僕は別に、君を殺すつもりはない」
…え?
殺すつもりはない…。じゃあ、何の為に…。
「それからもう一つ…。僕は召喚魔導師じゃない」
「…え…?」
召喚魔導師じゃない?
でも…私の部屋に現れた、あの異形のバケモノ。
あれはどう見ても、間違いなく冥界の魔物だった。
魔物を扱うなら、それは召喚魔導師ではないか。
「なら…あのバケモノは…?あれは魔物では…」
「…その、バケモノっていうのは」
私の戦意など、あっと言う間に消えてなくなった。
「…これのこと?」
目の前に現れたその異形に、私は思わず悲鳴を漏らした。
私も一度しか見られなかったし、それに…何度も言うように、不意打ちだったから。
でも、あの異形は間違いなく、魔物のそれだ。
そして魔物なら…過剰に恐れる必要はない、はずだ。
何せ聖魔騎士団魔導部隊には、吐月さんがいる。
彼が契約しているのは、冥界最上位の魔物と呼ばれるベルフェゴールさんだ。
更に吐月さんは、あのシルナ学院長ですら「初めて見た」と言わしめるほど優れた召喚魔導師である。
だからこそ、ベルフェゴールさんという高位の魔物と契約出来たのだろう。
逆に言えば、吐月さんクラスの召喚魔導師は、滅多に存在しないということだ。
聖魔騎士団魔導部隊にいる別の召喚魔導師さんも、吐月さんは特別だと口を揃えて言っている。
マシュリさんが、いかに優秀な召喚魔導師であろうとも。
でも、吐月さんほどではない。
それが分かっているなら、過剰に恐れる必要はない。
吐月さんとまともに戦って勝てる気はしないけど、でもマシュリさんは、吐月さんほどの召喚魔導師ではないろう。
だったら、私にも充分勝ち目はある。
契約している魔物の種類が分からないのが、唯一の不安材料だ。
何せ冥界には、ナジュさんが契約している、不死身の女王さえ存在しているのだから。
さすがに不死身の魔物は、リリスさんくらいだと思うけれど…。
何かしら、特殊な能力を持っている魔物である可能性はある。
しかし、それはつまり、その能力さえ警戒していれば良いということ。
…いずれにしても、私はおめおめとマシュリさんに殺されるつもりはない。
「これで最後の警告です。私を解放してください。さもなければ…手荒な手段を使ってでも、私はあなたを止めます」
私は強い敵意を持って、マシュリさんにそう言った。
マシュリさんは少しも怯んだ様子はなく、私をじっと見つめた。
…自分が負けるはずはない、と高を括っている顔ですね。
良いでしょう。あなたがそのつもりなら…。
…しかし。
「…君は二つ、勘違いをしている」
と、マシュリさんは言った。
「…何です?」
「僕は別に、君を殺すつもりはない」
…え?
殺すつもりはない…。じゃあ、何の為に…。
「それからもう一つ…。僕は召喚魔導師じゃない」
「…え…?」
召喚魔導師じゃない?
でも…私の部屋に現れた、あの異形のバケモノ。
あれはどう見ても、間違いなく冥界の魔物だった。
魔物を扱うなら、それは召喚魔導師ではないか。
「なら…あのバケモノは…?あれは魔物では…」
「…その、バケモノっていうのは」
私の戦意など、あっと言う間に消えてなくなった。
「…これのこと?」
目の前に現れたその異形に、私は思わず悲鳴を漏らした。