神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
更に、忘れてはいけないが。

イーニシュフェルト魔導学院では、シュニィの他にも探している人物…いや、探している動物がいる。

「…見つからないな、シュニィ…。…それに…いろりも」

「…うん、そうだね」

さすがのシルナも意気消沈。

一週間前は、ガトーショコラに大騒ぎしてたのにな。

今はそれどころじゃないよ。

シュニィに加えて…イーニシュフェルト魔導学院の新しいマスコットキャラとなった猫。

いろりの行方も、未だに分からないままなのである。

そのせいで、生徒達の間でも殺伐とした雰囲気が広がっている。

まだ学院に来たばかりとはいえ、凄く可愛がられてたからな、いろりは。

一日二日ならともかく、もう一週間姿が見えない。
 
いろりに興味のなかった生徒でさえ、そろそろ心配になる頃だ。

元々いろりを可愛がっていた生徒にとっては、言うまでもない。

でも…さすがに人間と猫では、捜索の優先度が段違いだ。

いろりの帰りを待っている生徒達には申し訳ないが、今はシュニィの捜索が最優先だった。

エリュティアは毎日、ほとんど休む暇もなく探索魔法を使い続け、シュニィを探しているのだ。

ただでさえ神経すり減らしているエリュティアに、「悪いけど猫探してくれない?」とも言えず。

結局、いろりの捜索は後回しにしてしまっている。

心配しないでもなかったが、やはりシュニィの方が優先度高いから。

いろりの心配よりも、シュニィの身を案じる気持ちの方が遥かに強かった。

一週間、聖魔騎士団総出で探しに探し回って、今のところ手がかりはゼロ。

俺達が焦るのも道理というものだろう。

アトラスは相変わらず穏やかじゃないし、団長がそんな様子で、おまけに副団長が不在なせいで。

現在の聖魔騎士団は、非常に重い空気が広がっている。

無理もない。

特にシュニィが隊長を務める魔導部隊は、それこそお通夜のような空気だとか。

シュニィの不在は、今のところジュリスが隊長代理として埋め合わせをしているそうだ。

まぁ、自然な流れだよな。

とはいえジュリスは、ベリクリーデの世話という重大な任務があるから。

気が抜けないので、早くシュニィに戻ってきて欲しいようだ。

俺達だって、負けないくらいシュニィに早く戻ってきて欲しいと思っている。

が、やはりシュニィがいないことで一番ダメージを受けているのは…アトラスと、その子供達だろう。

ルシェリート夫妻の子供達、アイナとレグルスには。

シュニィの不在を、「海外への出張」ということで説明しているらしい。

まさか、お母さんが何者かに連れ去られて生死不明、なんて言えないしな。

今のところ、二人の子供達はその説明で、不服ながらも納得してくれているらしい。

だが…こんなその場しのぎの嘘が、いつまで通用するだろうか。

シュニィがいなくなってから一週間。

子供達が母親のいない寂しさを我慢出来るのは、そろそろ限界だ。

アイナ達の為にも、早くシュニィに戻ってきてもらわなくては。

気持ちはいくらでも逸るのに、現実は非情である。

一週間経っても手がかりの一つも見つけられず、俺達はほとんどお手上げ状態に近かった。
 
…挙げ句。






「もう見つからないんじゃない?」

あっけらかんとして、令月がそう言った。
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