神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
分かったよ。

それでシュニィが戻ってきてくれるかもしれないなら、何でもやるよ。

すると。

「俺達、昼間も探しに出ていーけど」

すぐりがそう申し出た。 

「出掛けても良い?」

「何を言ってるんです。昼間は授業に出なさい」

イレースが一喝。

…そうだな…。

昼間も探してくれたら、それは有り難いけど…。

ただでさえ夜の間、ずっと扱き使ってる訳だから。

昼間くらいは、生徒として過ごしてくれよ。

「ゆーちょーだなー。そんなこと言ってられる状況?」

「いよいよ切羽詰まってヤバい状況になったら、そのときは頼むよ」

「今でもじゅーぶん、ヤバい状況だと思うけどね」

それを言うな、それを。

「で、学院長も羽久さんも、今日はどうするんです?聞き込みをするなら、心の通訳で僕も行きましょうか?」

ナジュがそう尋ねた。

心の通訳が出来るなんて、ルーデュニア聖王国広しと言えどもお前くらいだろうな。

「ありがとう、ナジュ君。お願いするよ」

「分かりました」

…さて、そういうことで決まりだな。

「令月、すぐり。この際多少遅刻しても良いから、少し休んでから授業に出ろよ」

こいつら、連日朝までオールだからな。

慣れているとはいえ、そろそろ疲れが溜まる頃だろう。

二人に無理をさせているのは、他でもない俺達なのだが。

せめて、少しくらいは休んで欲しかった。

「事が収束したら、特別に補習授業を開いてあげましょう」

あの鬼教官イレースまでも、らしからぬ優しい申し出。

しかし。

「うん、でも大丈夫だよ」

「不眠不休で丸々二週間近く、ターゲットの家の前で張り込みとか。ふつーだったもんねー」

「うん。それに比べれば、全然楽だ」

さすがは元『アメノミコト』の暗殺者。貫禄が違う。

が、ニ週間も不眠不休なんて、子供の身体には毒でしかない。

イーニシュフェルト魔導学院に来たからには、そんな奴隷労働はさせないぞ。

「良いから、少し休め」

自覚してないだけで、身体はちゃんと疲れてるんだよ。

「一眠りして、起きたら授業受けに来いよ」

「…過保護だなー」

うるせぇ。言われた通りにしろ。

「仕方ない。帰ってちょっと寝ようか」

「分かった」

令月とすぐりは頷いて、窓からひょいっと出ていった。

窓から出るな。扉から出ろ。

…って、もう行ってしまったけど。

「…さて、子供ばかりに頼る訳にはいかないな」

「…そうだね」

聞き込み調査、だっけ?

行くとしようか。俺とシルナとナジュの三人で。
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