神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
しかし。

俺の理解が追いついていようといまいと、すぐり達はお構いなし。

「僕が学院長の、『八千歳』が羽久の変装をするつもりなんだ」

「準備時間が短かったから、再現度はそんなに高くないけどねー。まぁ買い物するだけなら大丈夫でしょ」

「そうだね」

ちょっと待て、お前ら。

勝手に二人で喋って、二人で納得するな。

俺達に事情を説明しろ。

すぐりが俺の変装をするって、何だよ?

「じゃ、そろそろ行って来るよー」

「いや、おい。ちょっと待てって」

「夜が明けるまでには帰ってくるから、心配しないで」

心配するに決まってるだろ。

何をやろうとしてるんだ。お前達は。

取っ捕まえようと思ったが、そんなことをさせてくれる二人ではない。

俺が止める間もなく、二人は窓から飛び降りていった。

慌てて窓に駆け寄って、地面を見ると。

既に二人の姿はなかった。

…忍者みたいなもんだな。

「あいつら…一体何をしに…何処に行ったんだ?」

猫がどうのとか言ってたが…。何の話だ?

「…チョコドーナツ、食べてもらえなかった…」

おいシルナ。今そんなことどうでも良いから。

二人の無断外出より、チョコドーナツの方が大事だとでも?

「…何処に何しに行ったのか知らないが…」

せめて事情を説明していけよ。心配するだろうが。

帰ってきたら、改めて取っちめてやらないと…。

…まぁ、俺ごときに取っちめられてくれる二人じゃないんだが…。
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