神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…??

…そういや、さっきからえらく大人しいよな、ナジュの奴。

いつもなら、お得意の読心魔法で人様の心を読んでは、おちょくってくるのに。

「今日はえらく静かじゃないか。猫被ってんのか?」

「…」

「…ナジュ?」

本当に返事がないから、ちょっと不安になってきた。

どうした。頭でも痛いのか?

もしかして、また読心魔法を乱用し過ぎて、体調を崩したのか?

こいつ、いつも人知れず無茶するから。

もしまた勝手に読心魔法を乱用して体調を崩したら、金輪際こいつは学院の外には出さないようにしよう。

と、思ったが…。

「…あ、はい?」

俺に声をかけられて、ふと我に返ったように顔を上げた。

体調…悪そうには見えないが。

「どうしたんだよ、さっきから様子変だぞ」

何か思い当たる節でもあるのか。

それとも、本当に体調不良?

「…」

ナジュは答えずに、やはりしばし無言で思案し…。

そして、くるりとジュリスの方を向いた。

「…つかぬことをお聞きするんですが」

「何だ?」

「シュニィさんって、もしかして…猫とか犬とか飼ってます?」

…は?

ナジュの唐突なこの質問に、一同がぽかんとした。

…関係あるか?その質問…。

冗談を言っているのかと思ったが、ナジュはふざけている様子はなく、至極真面目に尋ねていた。

いや…そう聞かれても…。

「…いや、俺は聞いたことないが…」

戸惑いながら、ジュリスが答えた。

更に、他の大隊長達に尋ねた。

「誰か聞いたことあるか?シュニィから。ペット飼ってるって話」

「…さぁ…聞いたことないけど…」

「私も知りません」

俺も知らないや。

シュニィん家って、なんかペット飼ってるんだろうか?

「動物の匂いでもしたか?」

「いや…。ちょっと…」

「どうしても気になるなら、アトラスに聞いて確認しても良いが」

今のアトラスに声をかけるのは、かなり勇気が必要だろうがな。

「いえ、そこまでしなくて良いですけど…」

「…けど?」

「…。…?」

ナジュは煮えきらない表情で、不思議そうに首を傾げていた。

…本当にどうしたんだ?ナジュの奴。

いきなり妙な質問して…。

「ナジュ、気になることがあるなら言えよ」

ベリクリーデが何か感じ取ったらしい、ってさっきジュリスが言ってたからな。

神の器繋がりで、俺も何か感じ取れるかと思ったが、生憎出来損ないの俺では無理だった。

代わりに、何故かナジュが妙な雰囲気を感じ取ったようだ。

「この際、根拠のない直感でも手がかりの一つだ。思いついたことがあるなら、何でも言ってくれ」

その情報が、結果的にシュニィに繋がらなくても良い。

今は、少しでも情報を集めるべきときだ。
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