神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…どうした?

「…」

あれだけ自信満々に喋っていたのに、ベルフェゴールは突然黙り込んでしまった。

…本当にどうした?

「…ベルフェゴール?」

同じく怪訝に思ったらしい吐月が、ベルフェゴールに声をかけた。

「…」

しかしベルフェゴールは、契約者である吐月に声をかけられても無言だった。

…何なんだ、これは。

何か見つけたのだろうか?

俺達や、エリュティアでさえ見つけられなかったのに?

何故ベルフェゴールが…?

「ベルフェゴール、どうかした?」

「…お前ら…。これ…」

再度吐月が声をかけると、ベルフェゴールはようやく口を開いた。

これってどれだ?

「何でこんなところに…。…いや、まさか…。でもあれは噂で…。本当に存在してるはずが…」

ベルフェゴールはぶつぶつと、小さな声で呟いていた。

自分一人で納得せず、俺達にも説明して欲しいものだ。

明らかに、ベルフェゴールは俺達の知らない何かに気づいていた。

何でも良いから、教えて欲しい。

手がかりを得られるなら、ベリクリーデでもナジュでも、ベルフェゴールでも誰でも構わない。

この八方塞がりの状況を何とか出来るなら、鬼や悪魔にだって協力を求めたい気分だ。

「何か思い当たる節があるのか?」

「…」

「だったら教えて欲しい。ベルフェゴール、シュニィの身に何があったんだ…?」

吐月が尋ねると、ベルフェゴールはまた口を閉ざしてしまった。

「…それは…それは言えねぇ」

何故。

「ベルフェゴール…!」

「勘違いするな、別に意地悪で黙ってるんじゃねぇ…。人間が知って良いことと悪いことってもんがあるんだ」

…何だ、それは?

シュニィは一体、何に連れ去られたんだよ?

人間が知ってはいけないこと…?

それって、ベリクリーデが言う「凄く悪い人」に関係あるのか?

でも、ナジュは「獣臭い」って言ってたし。

…駄目だ。全然分からん。

「…ベルフェゴール…」

「悪いが、俺様から言えることは何もない」

さっきまでの自信たっぷりは態度は何処へやら。

ベルフェゴールは早々にそう切り上げ、逃げるように姿を消した。

…ベリクリーデの証言も、ナジュやベルフェゴールの証言も。

多分、とても重要な手がかりなんだろうと思う。

でも如何せん、それらの手がかりを上手く繋げて推測することが出来ない。

バラバラのパズルのピースみたいだ。

「…あの、済みません…ベルフェゴールが…」

吐月が、ベルフェゴールの非礼を謝罪した。

…いや、別にお前が悪い訳じゃないから。
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