神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「仕方ないよ、吐月君。今はまだ分からないことがたくさんあり過ぎるから」

「でも…ベルフェゴールは、明らかに何か知っていました」

シルナが励ますも、吐月はそう言って食い下がった。

…そうだな。あの様子だと…。

恐らくこれまで、この場に立ち会った者の中で一番…。

シュニィを誘拐した犯人について、目星がついているように見えた。

出来れば、それが誰なのか教えて欲しかったのだが…。

とんだ「お預け」を食らってしまった。

「ベルフェゴールが話してくれたら…。シュニィ隊長の居場所が分かるかもしれない」

「でもあの様子じゃ、ベルフェゴールは喋る気はなさそうだぞ」

「そもそも…『人間が知ってはいけないこと』というのは何でしょう?」

…分からないな。

さっきまでも充分深かった謎が、更にその深度を増していく…。

「…」

またしても、無言に陥る一同。

…参ったな。本当に手詰まりだ。

「…俺、何とかベルフェゴールに聞いてみます。少しでも情報を集めないと…」

吐月が沈黙を破ってそう言った。

…話したくないって言ってる奴を、無理矢理問い詰めるのは気分が悪いが。

今は、ベルフェゴールの持っている情報に期待するしかないか。

「…悪いな、吐月」

「いえ…。シュニィ隊長の…ひいては、聖魔騎士団の為ですから」

吐月だけに任せてはいられないな。

俺達も、自分の出来ることをしなくては。

一刻も早く…シュニィを、生きて連れ戻す為に。





…何とも煮えきらない空気のまま、結局この日は、それ以上の情報は何も出てこず。

その場はお開きとなった。
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