神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
聖魔騎士団魔導隊舎を出る頃には、既に日が落ちていた。

このままイーニシュフェルト魔導学院に帰ると思っていたのだが…。

「羽久、ナジュ君。ちょっと寄り道して帰っても良いかな?」

と、シルナが言い出した。

…寄り道…?

「何だよ。またおやつでも買って帰るのか?」

お前って奴は、こんなときに。

おやつ食ってる場合じゃないだろ。

しかし。

「違うよ。ちょっと…会いたい人がいて」

「誰だ?」

「シュニィちゃんの家に行こうと思って。アイナちゃんとレグルス君の様子…見ておきたいんだ」

…あぁ、成程。

それは…確かに重要だな。

「シュニィちゃんがいなくなって、もう一週間…。二人共、きっと寂しがってるだろうね」

「…そうだな…」

シュニィとアトラスの子供達、アイナとレグルス。

二人共まだ幼く、母親が必要な年齢である。

シュニィの不在を、子供達には「海外への出張任務だ」と説明しているらしいが…。

さすがに…そろそろ、騙すのは限界なんじゃないだろうか。

お姉ちゃんのアイナの方はまだしも、レグルスはまだ…母親の仕事なんて理解出来る歳じゃない。

寂しがってるに違いない。

「ケーキでも買っていこう。喜んでくれるも良いんだけど…」

「シルナにしては、珍しくまともな提案だ。分かった、行こうか」

「羽久がまた私に失礼なこと言ってるけど…。…その前に、羽久」

…何だよ?

「私の分も、ケーキ買ってって良いかな?」

「…好きにしろよ」

やっぱり自分の分も、おやつ買いに寄り道するんじゃないかよ。

ちょっと見直した俺が馬鹿だった。
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