神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
第7章
――――――…ルシェリート家の屋敷を後にし。
その日の夜、僕は遅くに床についた。
ベッドに横になって、寝室の天井をボーッと見上げながら。
僕が考えていたのは、先程のいじらしい幼女のことではなく。
夕方、聖魔騎士団魔導部隊隊舎にある、シュニィ・ルシェリートの執務室に行ったとき。
あのとき感じた、不思議な違和感のこと。
「獣臭い」って言っただろう?僕。
あれ、一体何だったんだろう。
シュニィさんの部屋に入った途端、僕は強烈な獣臭さを感じた。
分かるだろうか。何て言うか…動物園の猛獣エリアに入ったみたいな。
動物特有の、鼻につく匂いだった。
犬か猫でも飼ってるのか、って咄嗟に聞いてしまったけど。
犬や猫みたいな、小さな動物の匂いじゃなかったな。ライオンとかヒョウみたいな、大きな猛獣を思わせる強烈な匂いだった。
しかし、あの場にいた僕以外の誰一人、そんな匂いは感じないと言った。
あの場で僕だけが、謎の獣臭い匂いを感じ取ったのだ。
不思議なことがあるものだ。
あの場の全員の心を覗いてみたけど、どうやら嘘をついている訳ではなく。
本当に、僕以外の誰も、そんな匂いを感じてはいなかったのだ。
むしろ、僕が嘘をついているんじゃないか?みたいな空気だった。
まぁ、僕一人だけが「獣臭い」と言ったって、周りの全員は何も感じていないのだから。
そりゃ僕の方がおかしいんじゃないか、と思われても無理もないんですが。
でも、嘘ではないんですよ。
本当に僕は…獣臭い匂いを感じたんです。
あれは何だったんだろう。
僕だけが感じて、他には誰も感じなかった…。これって結構妙ですよね?
ジュリスさん曰く、ベリクリーデさんがあの部屋に入ったときも、気になる証言をしていたらしい。
あの人は神の器という特別な存在だから、常人では感じられない「何か」を感じ取っていてもおかしくない。
同じ理屈で、羽久さんも「何か」を感じるのではないか…と思われたが、そんなことはなく。
代わりに、何故か僕が妙な「何か」を感じ取った。
しかもその「何か」は、全く根拠のない獣臭い匂いだけ。
…意味不明ですよ。
確かに僕はあのとき、おかしな匂いを感じた…と断言出来る。
が、こうして一人になって冷静に考えてみると…。
あまりに意味不明で、荒唐無稽で、根拠薄弱で。
やっぱり、僕の気の所為だったんじゃないかと思ってしまう。
気の所為…じゃないはずなんですけど…。
…。
…そういえば。
僕は微睡みながら、ふと思い出した。
僕だけじゃなくて…吐月さんって言う召喚魔導師と契約している魔物…。
ベルフェゴールさんだっけ?
あの魔物も、急に出てきたと思ったら、気になる発言をしていたな…。
いくつか証言は集まっているのに、どれも整合性が取れなくて、意味が分からない。
ますます分からなくなるばかりだ。
…そこまで考えて、僕は思考するのをやめ。
睡魔に従って、夢の中に入っていった。
その日の夜、僕は遅くに床についた。
ベッドに横になって、寝室の天井をボーッと見上げながら。
僕が考えていたのは、先程のいじらしい幼女のことではなく。
夕方、聖魔騎士団魔導部隊隊舎にある、シュニィ・ルシェリートの執務室に行ったとき。
あのとき感じた、不思議な違和感のこと。
「獣臭い」って言っただろう?僕。
あれ、一体何だったんだろう。
シュニィさんの部屋に入った途端、僕は強烈な獣臭さを感じた。
分かるだろうか。何て言うか…動物園の猛獣エリアに入ったみたいな。
動物特有の、鼻につく匂いだった。
犬か猫でも飼ってるのか、って咄嗟に聞いてしまったけど。
犬や猫みたいな、小さな動物の匂いじゃなかったな。ライオンとかヒョウみたいな、大きな猛獣を思わせる強烈な匂いだった。
しかし、あの場にいた僕以外の誰一人、そんな匂いは感じないと言った。
あの場で僕だけが、謎の獣臭い匂いを感じ取ったのだ。
不思議なことがあるものだ。
あの場の全員の心を覗いてみたけど、どうやら嘘をついている訳ではなく。
本当に、僕以外の誰も、そんな匂いを感じてはいなかったのだ。
むしろ、僕が嘘をついているんじゃないか?みたいな空気だった。
まぁ、僕一人だけが「獣臭い」と言ったって、周りの全員は何も感じていないのだから。
そりゃ僕の方がおかしいんじゃないか、と思われても無理もないんですが。
でも、嘘ではないんですよ。
本当に僕は…獣臭い匂いを感じたんです。
あれは何だったんだろう。
僕だけが感じて、他には誰も感じなかった…。これって結構妙ですよね?
ジュリスさん曰く、ベリクリーデさんがあの部屋に入ったときも、気になる証言をしていたらしい。
あの人は神の器という特別な存在だから、常人では感じられない「何か」を感じ取っていてもおかしくない。
同じ理屈で、羽久さんも「何か」を感じるのではないか…と思われたが、そんなことはなく。
代わりに、何故か僕が妙な「何か」を感じ取った。
しかもその「何か」は、全く根拠のない獣臭い匂いだけ。
…意味不明ですよ。
確かに僕はあのとき、おかしな匂いを感じた…と断言出来る。
が、こうして一人になって冷静に考えてみると…。
あまりに意味不明で、荒唐無稽で、根拠薄弱で。
やっぱり、僕の気の所為だったんじゃないかと思ってしまう。
気の所為…じゃないはずなんですけど…。
…。
…そういえば。
僕は微睡みながら、ふと思い出した。
僕だけじゃなくて…吐月さんって言う召喚魔導師と契約している魔物…。
ベルフェゴールさんだっけ?
あの魔物も、急に出てきたと思ったら、気になる発言をしていたな…。
いくつか証言は集まっているのに、どれも整合性が取れなくて、意味が分からない。
ますます分からなくなるばかりだ。
…そこまで考えて、僕は思考するのをやめ。
睡魔に従って、夢の中に入っていった。