神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
未来、未来…か。

「遠くにいる人や、知らない人の未来は見えない。でも、自分の未来や目の前にいる人の未来を見ることが出来るの」

だ、そうだ。

「それは…どのくらい先まで見えるの?」

何千年、何万年後の未来まで見えるのだろうか。

それまで自分が生きていることが前提だが。

「見ようと思えば、その人の人生の最期まで見ることが出来るわ」

それは凄い。

「だけど…遠い未来であればあるほど、不確定要素がたくさん増えて…『青く』見えるから、見えたとしても本当にその通りになるかどうかは分からないわ」

と、スクルトは言った。

「青」…。

そういえば前も、「赤」だったとか口走っていたことがあったが。

その色は、スクルトの未来視の能力に何か関係があるのだろうか。

「青とか赤って言ってるのは?色が何か関係あるの」

「私が未来を見るときはね、その未来の景色が青かったり、赤かったり…黄色みがかかっていたり、オレンジだったり…。とにかく、色がついて見えるの」

結構カラフルな未来なんだね。

「赤に近いほど、その未来は確定している。逆に、青に近いほど不確定な未来で、私が見たものとは違う未来が訪れる可能性があるの」

「つまり…スクルトの未来視の能力は、常に100%確定した未来を見られる訳ではないんだね」

「そうね。実際、見えたのが『青い』未来だった場合、私が見た未来とは違う現実になったことが何度もあるわ」

…成程。

便利なような、そうでもないような…。

いや、でもその未来が「赤」…確定の未来だった場合は、100%その通りになるんだろう?

それだけでも、充分に凄い能力だ。

「数時間後とか翌日とか、近い未来を見るときは『赤』であることが多いわ。逆に遠い未来を見ようとすればするほど、色は『青』に近づくの」

「逆に言うと…『赤』は変えられない運命、『青』は変えられる可能性がある運命、ってことか」

「そうなるわね。でも…確かなことは言えないわ。遠い未来でも『赤く』見えることはあるし、数分後の未来でも、状況によっては『青く』見えたりもするし…」

…その時その時によって、見える未来の色はまちまちのようだ。

どんな色に見えたとしても、未来を見て「予習」出来るのなら、どのような未来がやってこようとも、ある程度は覚悟をして臨めそうだな。

でも…逆に、自分にとって辛い未来が見えて、それがもし変えられない…「赤」の未来だったら。

辛い運命がやって来るのを、何も出来ずに待っていることしか出来ない。

それは…凄く、辛いことだと思う。

でもスクルトは、これまで何度もそんな運命を乗り越えてきたんだろうな。
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