神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
今この猫は、園芸部の倉庫で飼われている。

俺か『八千代』が餌を買いに行って、それを与えて当面の間世話をしている。

今はそれで何とかなってるけど。でも、この状態はそれほど長くは続けられない。当たり前だけど。

俺は毎日ドラッグストアに猫缶買いに行っても、絶対バレない自信がある。

が、学院の中でこっそり猫を飼っている…というこの事実を、学院長せんせー達にバレないよう隠し続けること。

これは無理だと思う。

今は何とか隠せてるけど、いつかは絶対バレる。

ってか、もうバレてるんじゃない?ナジュせんせー辺りには。

それでもまだ、この場所が咎められていないのは。

真実を知っていながら、ナジュせんせーがその真実を黙ってくれているからなんだろう。

あの人、一応そういうところ気を回すことが出来るようになったんだねー。

何でもぺらぺら喋っちゃうから。

でも、いくらナジュせんせーが黙ってくれてても、限界はある。

いずれ他のせんせー達にもバレるだろう。

いつまでもいつまでも、この倉庫の中に隠し続ける訳にはいかないからね。
 
寒くなれば凍えるだろうし、暑くなれば蒸し風呂だよ。この倉庫。

そんなところに、猫を置いておく訳にはいかない。

季節が変わっちゃう前に、この猫をどうするか決めなくては。

良い機会だ。折角空気を読まない『八千代』が切り出したんだから、ここいらではっきりさせておこう。

これからこの猫、どうするのかについて。

とは言っても、考えられる選択肢は限られる。

「倉庫から出して外に放っておけば、勝手に野良猫に戻るんじゃない」

と、『八千代』。

それが一番手っ取り早いよねー。俺もそう思ったよ。

「そんな…。でも、こんなに人に慣れてるんだから、もしかしたら飼い猫かも…」

「そうだよ。もし人に飼われてる猫なんだったら、突然街中に出ちゃったら、生きていけないかもしれない」

大丈夫なんじゃないの?犬じゃないんだし。

野生の本能的な奴を発動させて、一匹でも逞しく生きていくんじゃない?

と、俺は思うけどさぁ…。

女の子達は、俺より遥かに優しい考えの持ち主であるようだ。
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